沈黙の臓器『肝臓』
医療の世界では、肝臓を“沈黙の臓器”と表現することがあります。誤解を恐れずに言えば、少々の生活習慣の乱れや負担にはビクともしない(黙って耐える)臓器、ということです。
それだけきくと大変心強く、また実際私たちの健康や生活の質を支えてくれている臓器なのですが、何事にも限度というものがあります。我慢強い肝臓も、その許容量を超えた負荷がかかったときには、他の臓器と変わらず、機能障害に陥ります。
また、この沈黙の臓器の弊害と言えるのが、肝臓に何らかの異常が生じている場合にも、痛みや違和感という病気のサインをなかなか送ってくれない点です。
症状が現れたときには病気がかなり進行している、というケースは珍しくありません。症状の有無にかかわらず、定期的に調子を窺い、また常に労わってあげなければいけない臓器でもあるのです。
日本肝臓学会専門医の医師が診察します
当院では、日本肝臓学会の肝臓専門医が診療いたします。
豊富な経験と新しい知識に戻づいた、正確な診断に努めております。安心してご相談ください。
当院で診察する主な疾患
- B型肝炎、C型肝炎などのウイルス性肝炎
- 脂肪肝
- 非アルコール性脂肪肝炎
- 肝硬変
- 肝臓がん
- アルコール性肝障害
- 自己免疫性肝炎
- 原発性胆汁性肝硬変
当院で行う治療について
当院の肝臓専門医が患者様の症状に合わせて、正確な検査と診断、適切な治療をご提案いたします。より高度な設備や入院が必要と判断した場合には、速やかに提携する医療機関をご紹介いたします。
急性疾患
急性肝炎
急性の肝機能障害を伴う病気です。食欲不振、黄疸、吐き気・嘔吐、倦怠感、発熱などの症状を引き起こします。
原因
原因となる肝炎ウイルスには、A型、B型、C型、D型、E型が確認されています。
A型とE型は、ウイルスに侵された水・食べ物を介して経口感染します。B型、C型、D型はウイルスが血液や体液を介して体内に侵入することで感染します。E型は、ウイルスに侵された肉類(豚・猪・鹿など)を十分に加熱処理せずに摂取することで感染します。
治療
C型肝炎以外の急性肝炎は、自然治癒が期待できると同時に、特別な治療法が確立されていません。安静の上、食事療法(低脂肪、高炭水化物)を行います。
劇症肝炎
急性肝炎が悪化した状態を劇症肝炎と言います。
もっとも顕著な症状として、肝性脳症が挙げられます。肝臓機能の低下によって血中に有害物質が流れ、脳の機能が低下します。また、感染症、循環器障害、脳浮腫、腎障害などを合併することもあります。
原因
B型肝炎ウイルスをはじめとするウイルス、薬物、自己免疫性肝炎などが原因となります。
治療
日本急性肝不全研究会のガイドラインに沿った肝移植、血漿交換療法や持続的血液ろ過透析、また多臓器不全に陥っている場合には、集中治療室での治療が必要になることもあります。(提携医療機関をご紹介いたします)
慢性疾患
B型肝炎
ほとんど無症状のまま進行します。ただし、無症状のケースでも、突然に劇症肝炎を発症することがあります。
原因
血液や体液を介して感染します。感染時の年齢や患者様の免疫機能の状態によって、一過性の感染で済むものと慢性化するものがあります。ほとんどは一過性ですが、特に小さなお子様の場合は感染が持続するケースが多くなります。
治療
インターフェロン、核酸アナログ製剤の投与といった「抗ウイルス療法」、もしくは投薬によって炎症を抑え、肝硬変・肝がんへの進行を防ぐ「肝庇護療法」などを行います。
C型肝炎
感染後は年齢に関係なく高確率で感染が持続し、20~30年をかけて、肝硬変、肝がんへと進展していきます。
原因
血液や体液を介して感染します。年齢に関係なく高確率で感染が持続します。
治療
かつてはインターフェロンを用いた治療が主流でしたが、近年、C型肝炎ウイルスの増殖を特定的に抑制する薬の開発が進み、現在は直接作用型抗ウイルス薬の服用によるインターフェロン・フリー治療が行われています。
抗ウイルス療法の適応外である場合には、肝硬変・肝がんへの進行を防ぐため、強力ミノファーゲンC、ウルソデオキシコール酸などが投与による「肝庇護療法」を行います。
肝硬変
慢性肝炎が悪化すると、肝硬変となります。
初期にはほとんど症状はありませんが、倦怠感や食欲不振が見られるケースもあります。その他、手のひらの赤み(手掌紅斑)などの特徴的な症状を伴うこともあります。
進行すると、黄疸、腹水、意識混濁、浮腫、肝性脳症などの重篤な症状が現れます。
原因
先述した肝炎ウイルス感染を原因とするケースが全体の約80%を占めています。次に多いのがアルコールによるもので、こちらは全体の10~15%程度を占めると言われています。
治療
肝硬変の原因の多くを占める肝炎への対策が第一です。B型肝炎であれば核酸アナログ製剤、C型肝炎であれば直接作用型抗ウイルス薬などを主に使用します。
また合わせて、食事療法や禁酒、疲労の蓄積を避けるなどの生活指導によって、肝機能そのものを回復させていかなければなりません。
進行した肝硬変に見られる腹水や浮腫に対しては、塩分摂取量の制限、利尿薬の投与などで改善を目指します。
脂肪肝
中性脂肪からなる脂肪滴が、肝細胞に蓄積してしまった状態を「脂肪肝」と言います。脂肪肝の10~20%が肝硬変に進行すると言われています。また、さらに進行して肝がんを発症するケースも見られます。
原因
アルコール摂取の過多、糖尿病、肥満を主な原因とします。
治療
アルコール摂取量のコントロール、または禁酒に取り組みます。糖尿病であればその治療も必要です。
肥満傾向にある場合は、食事療法と運動療法を組み合わせて、無理のないダイエットを進めます。
肝炎治療に対する医療費助成について
京都市には、肝炎治療の医療費助成制度があります。
B型ウイルス性肝炎、C型ウイルス性肝炎の治療を目的とした抗ウイルス治療(インターフェロン治療、インターフェロン・フリー治療、核酸アナログ製剤治療)については、自己負担分に対する公費負担制度が設けられています。
世帯の市町村民税課税年額に応じて、一定の自己負担分を越えた金額に公費が当てられ、患者様の実際の負担額が軽減されます。